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2018-11

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王宮キッチン3泊4日の旅

『王宮キッチン3泊4日の旅』

それは世界が閉じて数カ月後の物語。

+++

ぷちオフ参加者様へ。お疲れ様でございました。

お手元には旅行チラシが届いていることと思います。
イヒ鳥便の有効期限が切れる前に、カーシャへ行ってらっしゃいませ。

今回の手土産にリンクしていますが、原材料にさえ目を瞑れば問題ないかと思います!
それでは皆さま、良い旅を。

ツァイとカムロイの琥珀月よりお送りいたしました。

● COMMENT FORM ●

(1)

大陸閉鎖から八カ月…
住人が去ったネバーランドは今、残されたモノ達の楽園であった。

魔軍と名高いカーシャも例外ではなく。
聖神の統治下、呪竜が王都を闊歩する。
王宮内ではフリルドレスがひらりと踊り、警備の兵士が居た場所は不気味な甲冑が扉を守る。
執務室から聞こえるぺたんべたんの怪音は、悪名高いケーキの王によるものか。

城壁のロープにぶらさがり、中を覗いた商人は悟る。
入ると死ぬかも。
「…珍しい物がいるわけじゃないのにこの魔境っぷり…」
「しつけする人いませんからねー。おや?」
目の前の窓ガラスがバリンと割れて何かが飛び出す。
けたたましい警告音、いや警告声!

ふかもこ毛皮の中、殺気を飛ばすは灰色のペンギン。
駄目だすっかり野性化(魔物化?)している!
「わーー、だから無謀だと!」
「厨房に僕のフライパンが残っているんですよ!」
「カムさん、揺らすとロープ!ロープが!!」

凍れる大地の潜入作戦。
砂精霊と銀髪絵師の運命はいかに!

(2)

 さて話は数日前。ソファでごろついていた銀髪絵師がすっくと立ったことから始まった。
「オムライスが食べたい!」

「で…?」
ぷるぷると砂精霊の腕が震える。こみあげてくる怒りもだが、何より全身でひっつかまっている移動手段が半端ない速度で空を飛んでいるせいだ。
「俺は、なんで、イヒ鳥にさらわれてるんだ――!」
「違いますよ。乗せて貰ってるんじゃないですか。ちんたら歩いてたらカーシャは遠いですからねー」
「新聞取りに外に出ただけなのになんでこうなる!」
「本当は三泊四日のツアーにしたかったんですけど、ちょっと高かったのでツアーは諦めました。残念」
あーあとリラックスして巨鳥の背中に寝転がる魔法使いは、自分だけに風魔法を使用中。

「ゼノさんのオムライスももちろん美味しいんですがやっぱりたまには自分で作らないと! 僕の料理の腕がすたるってもんです。待ってなさいマイフライパ―――ン!」
「俺はゼノさんの朝飯が食べたいんだ―――!!」
そして何より家に帰りたい!
叫ぶ砂精霊には気の毒な現実だが、永久凍土の地は目前に迫っていた。
「ちょっと待て、これって着地できるのか!?」

(3)

「城内侵入成功!どうにかなるものですねー」

キラっと爽やか笑顔の銀髪絵師の横で。
『どうにかなる』を回想する。
紫の巨大イヒ鳥が氷山で滑って冬季限定絶叫マシーンの様だったり。
そのままペンギンの群れをなぎ倒し城壁に突っ込んだり。
拉致犯人に侵入道具(金具付きロープetc)を渡されたり。
城壁クライミング(?)中にロープ外れて落ちたり。

「窓!開いてるんだから壁登る必要ないだろ!」
「雰囲気出るじゃないですか。魔界を撲滅するんですから」
「いやここ、うちの王さまの城!!」
フライパン回収のはずが、なぜ撲滅。
そもそも一階の王宮キッチンに行くのになぜ城壁クライミング。

「取りあえずカムさん、ストレス発散で暴れない!」
「じゃあアレは?」
視線の先にはこちらに近づくもこもこの大群。イヒ鳥に跳ねられ怒りまくったペンギンの群れ。
「……………、えーと。吹き飛ばして?」

(4)

「動物虐待はよくないですよツァイ。訴えられます」
「ほほぅ。どの口が言ってるんだカムさん」
「朝ご飯食べてないからそうカリカリするんですね。あっはっは」
「だ、れ、の、せいだぁああああ」
もちろん隣で笑う悪の元凶のせいだが、腐れ縁とはそういうものなのだ。諦めるしかない(と銀髪絵師は真顔で思っている。←加害者の意見。
…被害者の意見が取り上げられるのはいつだろうか。
「しかしまぁ子ぺんぎん大繁殖ですね。今ならペンギン動物園とか開いたら大儲けできそうな…。いや、まずは僕のキッチンスタジアム建設が!」
「どこでそんな入れ知恵されてくるんだよ!?大量殺人計画はやめれ!」
思わず裏手で突っ込んだ砂精霊だが、その勢いで傍まで近づいていた子ぺんぎんをはたき飛ばした
「あ」
もこもこ大群がさらに殺気を増す。ざざーと血の気が引く音がする。
「いーけないんだ、いーけないんだー」
「カ、ム、さ、ん~~~!?いいからなんとかしろ!」
ちなみに砂精霊はそのセリフをすぐに後悔することになる。


「なんとかしましたよほら」
清々しそうな悪友の横、砂精霊はちょっと泣きたい気分で「穴」になった床を見下ろしていた。

(5)

「帰ってきましたよ!マイキッチンスタジアーム!!」
「待てぇい!ここはわしのキッチン!」

道中「穴」を増やしながら王宮調理場へ到達した侵入(撲滅?)部隊。
出迎えたのは野太い声。声?
「…えーと。あのー、料理長?何でここに」
「何故わしが厨房見捨てねばならん!愛用の鍋!愛用の包丁!そして愛しの我がキッチン!」
「話が分かりますねご老人!」
がっしと握手する二人を眺め、溜息をつく。つまりどちらも紙一重…。

「と言いたいのは山々じゃが、時々見に来ているのじゃよ。心配でな」
「調理器具ですか?」
「じゃなくてこれ」
ぴらりと渡される一枚のチラシ。

『王宮キッチン3泊4日の旅』

…どこかで聞いたような旅行チラシ。中身を読む砂精霊の眉間のしわが深くなる。
何だこれ。隣の銀髪倒せば世界が平和になるんじゃないか。

「料理長との料理対決!勿論挑戦しますとも、愛しのマイフライパンで!」
「君じゃないのか!?」
ガイドと料理長とパティシエKとキッチンマイスター。

「フライパン?見慣れんフライパンならそこに」
料理長が示す先には。
フライパンを齧っているのは青いケーキ。きろり、とぱっちり赤目がまたたく。
「見事に進化をとげたのですね」
「感動してるとこ悪いけど、進化した君のお子さんが食べているのはフライパン」

(6)

「貧血?」
銀髪絵師がことりと首をかしげる。本気で質問しているあたり、フライパンを齧りつづけるもの――その名は【物体X】が本来『ただのケーキ(食用)』であるべき常識はすっかり抜け落ちているようだ。
「いや、たとえ百歩譲ってケーキが捕食する側でもフライパン齧って鉄分補給はない!」
「そうですね、フライパンはやっぱりフライパンベッドが…」
気になる、と渡されたチラシに視線が食いつく。
「そうじゃろう、わしもな、そこが…」
「このツアーもう少しお値段が…」
料理人には一般人と違う感性があるのか、すっかりチラシに首っぴき。2人して床にしゃがみこむ姿は異様な雰囲気を醸し出している。
「あのー、そこー、もしもーし?」
「わし以外の奴がこんな高待遇の旅を味わえるかと思うと、うっかり無事に楽しんでしまわれないか心配でたまらんわい」
「そんな心配か!?」
銀髪絵師に加えて料理長にまで裏手突っ込みする、一人真面目な砂精霊。駄目だこのままでは突っ込み疲労で倒れてしまう。
「えぇいカムさん、さくっとフライパン回収!」
びしっと物体Xを指差す。そんな物体Xはフライパンを齧ったまま、びょこんと調理台に仁王立ち。
「☆○×$%!」
「『私から王者の証フライパンを奪いたくば、料理勝負に勝って見せろ!』と、現料理長がいっとるぞ。ちなみにわしは今見習いに降格中じゃ」
「ケーキに負けるなぁああああああ!!!」
『元』料理長の胸張った発言に、頭を抱える。しゃがみこんだ砂精霊と入れ違いに銀髪絵師がすっくと立った。立つと誰かに被害が起こるあれである。
「ふふふふふ、この地獄の料理人に勝てるとでも?いーでしょー。受けて立つ!! 判定はツァイ!」
「嫌だ! 俺はまだ死にたくない!」
「題材は…、よし料理の基本。料理漫画といえばまず卵料理対決から!」
ささっと元料理長が食材庫からさまざまな卵を籠に用意する。よみがえるのは某オムライスの悪夢。
「アレ・キュイジーヌ!(料理はじめ!)」
料理人達の嬉々とした悪夢の再来合図。

(7)

料理開始の掛け声に、砂精霊がキッと顔をあげる。

「卵料理の内容は『目玉焼き』!! 卵は6㎝以内の鶏の卵と限定する!調味料は塩・胡椒・醤油のみ!」
「却下!!」
びし、と見習い(元料理長)のフライ返しが砂精霊の眉間に刺さる。
「ええ却下です。卵の大きさを限定されるなんて我慢なりません!」
「巨大な卵には浪漫が一杯…じゃない! 地獄の料理人とやら。お主、フライパンを持っておらぬじゃろう」

冷静な指摘にぴしり、と挑戦者が凍りつく。
額を押さえた砂精霊も凍りつく。
そうか、つまり。
「神様ありがとうございますッ! もう一生フライパンなんて」
「つまり火を通さずに作れということですね!」
「Σ何でそうなる?!」

非加熱調理の卵料理対決。
加熱すれば安全か?といえば大いに疑問だが、生だと危険数値が跳ね上がる。
フライパンを使わない卵料理、卵料理…。
ふと、視線がボールに留まる。
「卵勝負は『プリン』対決で! ただし使用は普通の鶏のたまg、もごもがもごッ」
「行け!! 全力で料理するのじゃ!」
「もごもががががッ!!!!!!!」
「神聖な料理対決を邪魔する者はわしが許さん」
見習い(元料理長)の目に涙が光る。
挑戦者(地獄の料理人)が深く頷き、受けて立つまで、と現料理長(青いケーキ)がボールへ手を伸ばす。
じたばたともがく判定役(砂精霊)を除き、心を一つに料理対決が始まった!

(8)

広い王宮キッチンは熱い対決を一目見ようと集まった(?)子ペンギンやら、踊るドレスやらの観客で所狭しと埋まっていた。いつの間にか用意された実況席には、どこからか蝶ネクタイを用意してきた元料理長。
「さぁ始まりました! まずは王者物体X! 躊躇することなく卵を飲み込んでいる! これは最初から我々の度肝を抜く調理法ですね砂精霊殿」
「俺もう何も見ないで家に帰りたいなぁ…」
「おぉっと、大して挑戦者! 一瞬で貴重なイヒ鳥の卵を選びだした! 噂では鳴き始める直前がおいしいというイヒ鳥卵! しかもあれは飼育困難、捕獲のレベルS! あの極彩色の卵がどう変身するのかこうご期待といったところか!」
「普通の卵…」
哀愁を帯びた砂精霊の呟きはマイクを離さない状態の元料理長にも、興奮しすぎて将棋倒しをしている観客にも相手にされない。
「これは両者素晴らしい! なんてイキがいい卵料理…新しいプリンなんでしょうか!」
「俺プッチンプリンで十分…」
なんでいっつもイキがよくなるんだよ。しかも両方かよ。泣くぞこらっていうか何で調理中の卵が啼く!?
「ツァイ…いくら君の好きな小豆を使った和風プリンにしてあげたからって泣いて喜ばなくても…」
冬場のスイーツは和風が流行りますよねーと銀色ボール抱える挑戦者。の手元でなぜか形状記憶合金のように踊るプリン液。見ているだけで口の中が弾けそうだ。小豆を煮ている鍋は二、三メートル垂直に飛び跳ねている(非常にうるさい)
現料理長のケーキは積み上げられた卵の陰で咀嚼している不穏な音ばかり聞こえる。
「これは審査しがいがありますぞ審査員殿!」
「俺は死刑執行直前の気分なんd…」
「残り調理時間5分! 両者急いでください!」
「…ホントの敵はアンタなんじゃ…」
哀愁涙が殺意に変わりそうな審査員であった。

《調理終了!》
ブビーっとけたたましいベルが鳴る。実況席の張り紙に審査員席の張り紙が貼られ、ガラガラと料理が運ばれてくる。
「まずは王者の【王宮キッチンプリン】! バケツサイズプリンながら繊細で複雑な味で最後まであきさせません!」
「あれ、サイズはともかく結構普通においしそう?」
あのケーキいつこんなまともなプリンを!
味見ぐらいなら生き残れるかもしれない! 歓喜でスプーンが震える。
「? 料理長はどこいったんじゃろうか…」
「その辺で遊んでるんだろ。あのケーキ意外にやれるんだな、そっか元料理長に勝ったんだもんな!」
調理中の光景は謹んで忘却しようとした砂精霊のスプーンがプリンに突き刺さる。
 …プリンと目があった。
「おや料理長。自らプリンと同化して繊細で複雑な味を表現なされたのですな流石!!」
「物体X入りのプリンなんざ味見できるかぁああああ! 却下! 失格! 次!!!!」
「なんと、味見しなくては審査できませんぞ!」
「調理勝負なの! 料理になります勝負じゃない!
はい次! 絶対次!」
机をたたき割る勢いで連打し、次の料理を運ばせる。
「これはもう僕が王者のフライパン貰えることは確実ですね!」
ちゃっかり調理中に放置されていたフライパンをトロフィーのように抱えて、銀髪絵師が勝利の笑み。
「今回は新生和風プリン王宮キッチン編です!」
サイズは普通。イヒ鳥卵色のプリン。なぜプリンが極彩色模様。小豆はどこいった小豆。
「いけますよこれは!」
「そうだな絶対即死いきますコースだよなこれ。もう物体Xが失格でカムさん優勝なら俺味見いらなくない? いらないだろ? いらないだろぉおお!?」
「あ、小豆ソース忘れてまs…」
忘れられていたソース鍋(もちろんずっと垂直飛び)が、タイムリーに蓋を弾け飛ばす。噴水のように飛び出してくる和風ソース!
「? 砂糖の量間違えたっけ?」
「そんな可愛い間違えで毎回こうなってるとか俺は却下します! 全部却下!!!!!」
そして全力退避なのだった。

(9)

鍋から溢れた小豆ソースの海を抜け、真っ黒になりながらキッチン外へとひた走る。
「鍋おかしいだろ!?何で中身で部屋が溢れる!」
「炭酸を振ると爆発する、あの理屈です」
「ああ成る程………、ってそんなわけあるかーーーーーー!!」

冷たいプリン用のソースなのがせめてもの救い。
熱くは無い。が、色々な物が流されてとても走りにくい。                     
「前はケチャップ、今度は小豆…」
「ツァイ甘いもの好きでしょう」
「甘党でも嫌いになるわ! ん?料理長はどこ行った?」
「プリンでしたらソースのどこかに」
「元 料理、長!」
「でしたら向こうに」
銀髪の魔法使いが指さす先。ごとごと流れる冷蔵庫。
答えを予想し沈黙する。ああ。冷蔵庫ベッドもあったっけ。
楽しげにフライ返し握った手が振られる。クルージングを楽しんでいるのか、この、小豆ソースの、濁流で。

「ふ。創造物の分際で料理対決を挑むからです」      
「どーするんだよこの小豆ソース。修繕費なんて払わないぞっ」
「お菓子にして証拠隠滅しましょーか。お土産とか。でもこのケーキはいりませんが!」                    
とうっ!とフライパンが飛ぶ。       
吹き飛ばされる一匹のケーキ。小豆の海にフライパンごとぼちゃんと消える。
                        
「ところでツァイ」
「…聞きたくないけど何かなー」

沈黙の中、びしっと指される小豆の海。
声高らかに銀髪絵師は宣言した。
「さぁ!フライパンを探しにゆきますよ!」
「カムさんは少し反省しろ!!!」

そんな理由で一蓮托生。カーシャ土産をお一つどうぞ。


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ツァイ・イー

Author:ツァイ・イー
砂精霊の商人で琥珀月の主。
性格は気まぐれで楽しいことは大好き。
退屈を嫌うが以外と保守的。
宝石や鉱石を主とした品を扱うが、専門外でも面白ければ店に並べているらしい。
北の島国カーシャに居を構える。

御厄介になりますよ。

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